修理工事報告書は、その建物が次に修理されるときにも開かれます。何年にどこをどう直したかが記録されているのは、その一冊だけだからです。市販されず、関係機関と研究者に配られて終わるため、古書として探している方がいます。
当店は大阪市の十三駅近くのマンションで約800冊、香川県高松市で約1,500冊、香川県丸亀市で1,000冊の報告書類をお引き取りしてきました。関西を出て四国まで車で伺った案件です。
目次
修理工事報告書の買取価格は付図が残っているかで変わります
報告書は本体だけでは用が足りません。断面図や矩計図の入った付図が別冊で付いていたものが多く、そこが抜けていると資料としての価値が落ちます。
部数が最初から少ない資料です
重要文化財の解体修理は、一つの建物で数年かかることがあります。その記録が一冊にまとめられるとき、刷られるのは数百部という規模です。頒布先も所有者と行政、関係した設計者や技術者、大学の研究室に限られます。書店の棚には並びません。
そのため、建築史や文化財保存を研究している方が後から探そうとしても、古書として市場に出るのを待つほかありません。本堂や塔、山門の解体修理報告は、いま最も問い合わせを受ける資料のひとつです。
図面の袋が付いているかどうかで扱いが変わります
付図は折り畳んで袋や筒に収められていることが多く、本体と離れて保管されがちです。書棚の別の段に立てかけてあったり、押し入れの奥に筒だけ残っていたりします。本体を運び出すときは、周りに図面の袋がないか一度見回していただけますか。
写真帳が別冊になっているものもあります。修理前の破損状況を撮った写真は、あとから撮り直しがききません。これも本体と一緒にしてお見せください。
県教育委員会や文化庁の刊行物、寄贈印のあるものも査定します
非売品と書かれていても査定します。丸亀市の一件では県教育委員会が発行した報告書が多く含まれていました。都道府県や市町村の教育委員会、文化庁の関係機関が出した刊行物は、そもそも売買を前提にしていないため定価がありません。定価がないことは評価が低いことを意味しません。
寄贈印や蔵書ラベル、研究室名のゴム印が入っていても引き取ります。誰の手元にあった資料かが分かるものは、剥がさずそのままでお持ちください。
一つの県でまとまっていると金額が変わります
同じ県の社寺が10件、20件とまとまっている状態は、あとから集めて作れるものではありません。
地域ごとの修理の傾向が読めるまとまりになるからです。奈良県、京都府、滋賀県のように文化財建造物の多い地域の揃いは、とくにご相談いただきたいところです。
まとめて残っていたら分けずにお見せいただきたい資料
- 国宝・重要文化財建造物の修理工事報告書(本堂・塔・山門・書院などの解体修理の記録)
- 城郭の修理工事報告書、天守や櫓の復元工事の記録
- 付図・図面・写真帳が別冊で揃っているもの
- 一つの県や地方でまとまった揃い
- 都道府県・市町村の教育委員会が発行した文化財調査報告書
- 旧家や町並みの保存調査報告、伝統的建造物群保存地区の調査書
- 持田武夫『建築規矩術 二軒隅』のように、文化財選定保存技術の伝承事業として出された技術書
- 平政隆 編著『愚子見記 法隆寺蔵本完全復刻版』などの木割・規矩術の古典の復刻
- 古民家の調査と再築のような、民家の実測調査と保存の実務書
- 郷土史・自治体史・民俗調査の記録のまとまり
実際につけた金額では、『国宝 唐招提寺金堂修理工事報告書』全5巻揃に別添図が付いたもので11,000円、東本願寺の『御影堂御修復工事報告書』は第1冊のみで5,100円です。付随する技術書では持田武夫『建築規矩術 二軒隅』と平政隆 編著『愚子見記 法隆寺蔵本完全復刻版』がそれぞれ10,000円、『白井晟一全集』(同朋舎出版)が6,000円、『古民家の調査と再築』が2,200円でした。書名ごとの金額は建築・文化財資料の買取価格一覧でご覧いただけます。
重要文化財修理工事報告書の買取実例 大阪・高松・丸亀で3,300冊
報告書類と郷土資料をお引き取りした5件
十三のマンションに約800冊が積まれていました
大阪市の十三駅近くのお宅で、社寺仏閣の修理工事報告書が壁一面に並んでいました。神社、お寺、お堂、祠、旧邸宅と対象がばらけていて、規模の大きい建物から小さな祠までひと通り揃っていたのが印象に残っています。遺跡の発掘報告書も混ざっていました。約800冊を出張でお引き取りしています。
高松市は美術史と考古学が同じ棚にありました
香川県高松市の約1,500冊は、報告書だけではありませんでした。寺社建築の修理記録の隣に仏像と絵画の美術史、その先に考古学の専門書。文化財を建物からも仏像からも見てきた方の書棚だと分かる並びで、県や市町村、文化庁の関係機関が出した刊行物がまとまっていました。
丸亀市はご親族が遺した1,000冊でした
「親族が遺した修理報告書や建築の専門書を見てほしい」というご依頼でした。社寺仏閣の修復記録、文化財建造物の修理報告、旧家の保存調査、県教育委員会発行の報告書。あわせて日本建築史、数寄屋建築、社寺装飾、城郭建築の専門書、文化財修理技術者の著作、古建築図録も残されていました。ご親族には内容の見当がつかないとのことでしたので、仕分けからこちらで進めています。
郷土史や自治体史のまとまりも同じ扱いです
奈良県橿原市では郷土史が約3,000冊、天川村では400冊ありました。市町村史や地域の民俗調査の記録は、その土地でしか作られず、作った部数も限られます。報告書と同じ理由で探されている資料です。奈良県内は本店から近いので、冊数が多い場合も日程を合わせて伺えます。
石碑を紙に採った拓本が報告書と一緒に出てくることもあります。拓本や法帖の見方は書道の本の買取にまとめています。
香川県までは車で伺いました
報告書類は関西の外でもお引き取りしています。高松市の約1,500冊と丸亀市の1,000冊は、どちらも車で香川県まで伺った案件です。報告書は判が大きく重いので、量がまとまるほど送るより伺うほうが早く済みます。
数千冊のまとまりがあれば、距離は査定をお断りする理由になりません。ジャンルは違いますが、鳥取県米子市では1万冊の蔵書を出張でお引き取りしました。日程だけ先にご相談ください。
発掘調査報告書だけは事情が違います
発掘調査報告書は、買取が難しいのが実情です。全国遺跡報告総覧などでPDFの公開が進み、必要な図版と本文が誰でも画面で読めるようになったためです。紙で手元に置く必要が薄れた結果、古書としての引き合いが大きく減りました。
ただし、公開されていないものもあります。刊行が古く電子化の対象から外れているもの、部数が極端に少なく所在の把握されていないものは別です。また修理工事報告書や建築史の専門書と一緒に出てきた場合は、全体を拝見してお引き取りできる範囲をご案内します。発掘の分だけを理由にお断りすることはありません。
建築や文化財の資料に実際についた金額は、書名ごとの一覧に並べています。
付図の袋をなくした 湿気で反った 自分では運べない
Q. 付図が入っていた袋をなくしました。図面だけ残っていれば大丈夫ですか?
A. 図面が揃っていれば問題ありません。袋や筒より中身が大事です。折り目に沿って破れかけている場合も、そのままお持ちください。テープで留めると評価が下がります。
Q. 寺の庫裏に何十年も置いたままで、湿気で反っています。
A. 反りやわずかな染みは査定できます。判断が分かれるのは、開くと紙が貼り付いている状態と、カビが広がって粉になっているものです。この2つは減額の要因になりますが、拝見してからご説明します。乾かそうとして日に当てると変色するので、そのままにしておいてください。
Q. 何十箱にもなりそうで、自分では運び出せません。
A. 書棚から出す作業からお任せください。報告書はA4より大きい判のものが多く、詰めると一箱がかなりの重さになります。丸亀市の1,000冊も高松市の約1,500冊も、こちらで箱詰めして運び出しました。箱をご用意いただく必要はありません。
研究室にある報告書は、理工系の専門書と一緒に出てくることがあります。その場合は数学書と物理学書の買取もあわせてご覧ください。
次にその建物へ足場が組まれる日、開かれるのはこの記録です。探している研究室や資料室に届く形にします。建築の専門書や郷土史が混ざっていても、分けずに拝見します。

