私にぴったりの世界

ポ―ランドからベルギーへと移住したあるユダヤ人家族。
その仕事は服飾業界と決まっていました。
曾祖母が青空市で働き、両親が起業。
そんな家庭で生まれ育った少女もまた、服のバイヤーとなります。
ですが、彼女の祖母はあまりにも両極端だったのです。
母方の祖母は、いつまでもショアーの亡霊から逃れる事ができず、父方の祖母は戦後の発展に乗りました。
そんな祖母達の間を行き来しながら、少女はやがて自分の世界を見つけていったのです。

ユダヤ人が、なぜ金銭に執着するのか。
それは、彼らが祖国を持たないからです。
不安定な状況のなかでも生きていけるように、彼らは裁縫道具を持ち歩きその腕を磨いてきました。

ですが、時代は彼らから職さえも奪ったのです。
それは、既製服の大量生産です。
時代に翻弄されながらも、希望を失わず賢明に生きる姿は多くの人に勇気を与えてくれます。

少女が向ける、家族への鋭くも暖かな眼差し。
この本は、家族史でもあるのです。

                                                                                                                       2023年3月の買取価格です